「宗廟祭礼」は宗廟で行われるひとつの儀式で、朝鮮時代の国の儀礼の中でも規模が大きく重要なものであるため「宗廟大祭」とも呼ばれています。これは儒教礼節の手順により粛々と執り行われる王室の儀礼で、この儀式を通じて東洋の基本理念である「孝」を国家の次元で実践し、民族共同体としての連帯感と秩序を形づくる役割をしました。
この宗廟祭礼は大きく定時祭と臨時祭に分けられ、季節によって初物の果物や穀食を捧げる薦新祭(チョンシンジェ)などもありました。定時祭は春・夏・秋・冬が始まる月である1・4・7・10月とナビル(臘日)に祭祀を執り行い、臨時祭は国に何か吉凶事があるごとに臨時的に執り行いました。このような儀礼も解放以後一時は廃止されていましたが、現在では原則的に毎年5月の第一日曜日に行っています。
一方、宗廟祭礼楽は宗廟で祭祀を行なう際に奏でられた器楽と歌、舞のことを言います。これは朝鮮時代世宗大王の時代、宮中の宴会で演奏するために作られた保太平(ポテピョン)と定大業(ジョンデオプ)を由来とするもので、世祖10年(1464)、祭礼に必要な楽曲が加わりながら宗廟祭礼楽として正式に演奏されました。宗廟祭礼楽はそれ以降壬辰の乱(文禄・慶長の役)と丙子の乱などの動乱を経て一時的に縮小や中断を余儀なくされたりしましたが、朝鮮第21代王・英祖の時に一部変更された形が今日まで伝えられています。
宗廟祭礼楽は祭礼が進む間に各々の手順により保太平と定大業11曲がそれぞれ違う鳴り物で演奏されます。また正殿の前の階段の上の上月台(または上越台)で歌詞のない音楽を演奏する楽団を登歌と呼び、階段下の下月台(または下越台)で歌詞のある音楽を演奏する楽団は軒架と呼ばれ、それぞれの編成も時代により少しずつ変化しながら現在に至るとされています。
保太平と定大業の簡潔で力強い曲は偉大な国家を発展させた王の徳を賛辞する内容になっており宗廟祭礼楽が演奏される間、文治と武功を象徴的に表した舞踊である「文舞」と「武舞」が曲に合わせて踊られます。
文武は歴代の王達の文道の徳を称える踊りで、保太平に合せ左手には笛を右手には羽毛をつけたジョクと呼ばれるものを持って踊られます。一方武舞は先王達の武功を讃える踊りで定大業之楽に合せ木で作った刀と槍、弓と矢を持って踊られます。
この宗廟祭礼と宗廟祭礼楽は重要無形文化財第56号と第1号にしていされており、2001年5月18日にはユネスコの「世界無形文化遺産 (人類の口承及び無形遺産の傑作)」に定められました。
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